シャルル・シナリオサンプル

たそがれの空の下で


【シャルル】
「まって、待ってよ……! 僕、そんなに早く走れないんだ」

【シャルル】
「ふふ、君は足がとても速いんだね。羨ましいよ」

【シャルル】
「……見て、地平に日が沈む」



【シャルル】
「……」

【シャルル】
「あのね、あの……君はもう、気づいているかもしれないね。とても不思議な子だから。
――特別な、子だから」

【シャルル】
「僕は死ぬ。もうすぐ、神の国へと迎え入れられる。この心臓は、もう僕が年を重ねることを許さない」

【シャルル】
「死は、怖いものじゃない。安寧だ。神が人に平等に与えたもうた、唯一の――愛。
だから僕は、ちっとも恐れてなんかいなかったんだ」

【シャルル】
「父が死んだ時だって、悲しかったけれど――すぐに会えるって、思ってたから。
僕は毅然と、父を見送ることが出来た。……自分の終わりも、同じように迎えられると思ったんだ」

【シャルル】
「……全ては、過去形になってしまった」



【シャルル】
「何故だか、わかる? ……ふふっ、ごめん、困らせたね」

【シャルル】
「君に出会って、しまったから」

【シャルル】
「……何故、神は君を僕の前にくだされたのだろう。この、もうわずかも残っていない命が尽きる、間際に」

【シャルル】
「ごめんね。もうすぐ死ぬ男に、こんなこと言われたって、困ってしまうよね」

【シャルル】
「……ああ、でも……」

【シャルル】
「僕、君に困ってほしいのかもしれない……」

【シャルル】
「ああ、だめだ。こんなこと、神にそむいている。――ああ」

【シャルル】
「今、初めて僕は、死が恐ろしい」

【シャルル】
「ねぇ、マリー」

【シャルル】
「……君は、そこに、いるの……?」