YUKINARI WARANAGA

※サンプル内では、主人公の名前をデフォルト名で表記します。

共通シナリオ サンプル

「やーやー佐藤くん」
「靴木さん?」
「やははー、君はいい子だなー! 僕のこともさん付けで呼んでくれるんだね」

そういって、靴木さんはにこにことわたしに右手を差し出した。

「改めて、朽木音々だ。よろしく、佐藤くん」
「は、はいっ! よろしくお願いします!」

少年特有の高い声で、だが鷹揚な口調で握手を求められ、わたしは思わず
会釈しながら彼の手を握った。
体に似つかわしくない、大きな手だと思った。

「こんな体だが、もう28になる。あの4人の中でも、最年長にあたる」
「そ、そうですね」
「君とは、一回り近く違うんだなぁ。日ノ一くんなんかから見ると、もうおじさんかもしれないな」
「……」

答えに困って、無言になってしまった。
目の前にいるのが普通の28歳の方だったら、「なに言ってるんですか」と笑い飛ばしただろう。
だけど、靴木さんはどう見ても幼くて、それは原因不明の病のせいだというから、
どう返していいのかわからなかった。

靴木さんはわたしの戸惑いに気づいたようで、ああ、と困ったように笑った。

「ごめん。困らせてしまったね」
「い、いえっ……!」
「中身は、いたって普通の28歳なんだ。すまないね」

そう言った靴木さんは寂しそうで、わたしはかける言葉もなく頭を下げるしか出来なかった。


愛情ルート サンプル

「……っ、ぅ、う……!」
「音々さん!?」

ぽろぽろと。
大きな瞳から、大きな涙。

音々さんが、泣いていた。隠すこともなく、無防備に。

「ど、どうしたんですか!?」
「くや、しい」
「え……?」
「君を、守れる体が、僕には、ない……!」

血を吐くような、言葉だった。

わたしを、守れない?
あんなに戦いで傷ついても、病で理不尽な目に遭っても、一言の弱音も漏らさなかった音々さんが、
わたしを守れない、そのことで、泣いている?

震える細い肩が、いっそう大きく上下に震えた。

「ごめん、ごめんね……」
「あ、謝らないでください……、だって、音々さんが、悪いんじゃ……!」
「僕が、負けたら」

言葉に、音々さんに触れようとした手が止まった。
音々さんは、笑っていた。泣きながら、笑っていた。

「この体は、ずっと、このままだ」
「ねお……」
「僕は君の、恋の相手になる資格もない」


屈服ルート サンプル

「屈服……屈服、ねぇ……」
「ねお、ん、さ……」

彼の名を呼んだ声は、震えていた。

正直に言って、わたしは彼を侮っていた。
心はそうでなくても、体は10歳。
本気になれば、跳ね除けるのも容易いと思っていたのだ。

まさか、薬を使われるとは思わなかった。
体が痺れて、指の一本すら思い通りになりそうになかった。

「ひどい条件だよね。こんな体じゃ、女の子一人だって思い通りに出来ないっていうのに」
「……ひ、ぅ」
「ねえ、どうすれば屈服してくれる?」

無邪気とすら形容できる、明るい笑顔だった。

細い指が、体をなぞる。
痺れているのに、感覚だけが残っている。
わき腹の辺りを、手のひらでさすられた。

「僕さ、当たり前なんだけど、女の子抱いたことないんだよね」
「や、っ」
「どんな感じがするのかなぁ。君、知ってる?」
「しら、ない……!」

ぼろぼろと、涙がこめかみを伝って床を濡らす。
わき腹に触れていた手が、するすると上に移動する。
音々さんは、やっぱり笑っていた。

「そっか、じゃあ、おそろいだね」
「……っ!」

こんな状況でなければ、微笑ましくすら思ったかもしれない。
「おそろい」という響きが、どこか軽々しくて、それでいてわたしを馬鹿にしたような色を含んでいて、
叫びだしたいぐらいだった。




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